対談 大隅良典 総研大名誉教授(3/3ページ)

総研大は研究者の登竜門かつ殿堂 長期的視点を忘れないことが大事

岡田 本学の学生や教員に向けてメッセージを頂きます。

大隅 今は、特定の先生の下で研究したいという学生をあまり聞かなくなりました。総研大は世界的に活躍される先生方も多く、研究設備や施設にも恵まれていますから、研究者なら誰もが一度は総研大を目指すことを考えるような存在になってほしいと思います。総研大は基礎科学という王道の上に立っていることをもっとアピールするといいですね。研究が心底好きな人が憧れるようになればいい。
総研大本部がある神奈川県は、大学や企業の大きな研究所が多く存在しています。例えば川崎市民アカデミーが生涯学習の機関として20年以上前に立ち上がっているなど研究者には環境が整っている地域ですから、神奈川県の各機関との連携も大切にしていくべきでしょう。

岡田 本学も最近は地域連携や広報活動にも力を入れるようにしています。
ところで、先生のノーベル賞受賞対象になった論文4つの1つに、総研大生がトップオーサーとセカンドオーサーになっているものがありますね。

永山 総研大は日本全国の研究者の供給母体として機能しており、いったん本学の外へ出ても、再び戻ってきて教育活動に携わってほしいと思います。

大隅 現代は新聞をにぎわすような大企業でも先行きは分かりません。一人っ子が増えて親の意向も確かに無視はできないでしょうが、人生は1回しかないのですから、若い人にはぜひ夢を持ってもらって、やりたいことをやってほしいですね。私も何とかなるさという気持ちで好きなことをさせてもらいました。時代は変わりましたが、若い人もぜひサポートしていきたいと思います。

永山 大方の予想を裏切り、アメリカでトランプ大統領が誕生したように、先の見えない流動化の時代へと突入しつつありますね。

大隅 大いに感じます。だからこそ、研究者だけでなく、企業人もあるいは政治家も10年後、20年後という短いタームではなく、100年後の日本を考えるぐらいの気概を持ってほしい。

永山 そうですね。今日の先生の言葉は若い人への最大の励ましになるでしょう。

岡田 先生の今後のご研究については。

大隅 オートファジーについては、感覚的には、3割ぐらいしか解明されておらず、まだまだ残された研究分野は多いと考えています。生理学に特化して定量的解析も進めたい。その間にも、後進にバトンタッチしていく準備を進めていこうと思います。私としては、何かを終わらせるというイメージは持っておらず、何らかの問題提起をしていきたいと考えています。

岡田 本日は素晴らしいお話をたくさん頂きました。また、研究活動の充実につながる意欲的なご構想もお聞きすることができました。今後のご発展を本学一同、お祈りしております。
今日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

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