2024.04.09

2024年度春季入学式 学長式辞

2024年度春季入学式が総研大葉山キャンパスで行われました。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

2024年度春季入学式 学長式辞

 総合研究大学院大学SOKENDAIに入学された皆さん,入学おめでとうございます。本学の教職員を代表して,皆さんの入学を心から歓迎いたします。

 さて,皆さんご承知のように,本学は「大学共同利用機関」と呼ばれるトップクラスの研究機関で次世代を担う博士人材を育成するために設立された大学です。皆さんは,これから全国に点在する研究機関で学修と研究に取組もうとされているわけですが,恐らく,今は期待と不安が入り混じった緊張した気持ちでおられると思います。

 そんな皆さんに,学長としてお話ししたいことは多々あるのですが,今日ここでは,皆さんがこれから大学院生活を送られるうえで,常に頭の片隅に留めておいて頂きたいフレーズを2つほど挙げたいと思います。

 ひとつめは「大学院時代の経験=student experience」です。

 大学院課程では,自らが専門と定めた分野で高度な知識や研究手法を修得し,新たな課題を見出してそれを解決する力を身につけることが求められています。その結果として学位が授与されるのですから,博士の学位は大学院課程の最終ゴールと言えます。しかし,学位の取得のみに意味があるのではなく,大学院でどのような経験を積んだか(student experience)に本当の意味があると私は思います。

 これに関連して紹介したいのが,”connecting the dots”という言葉です。Appleの創始者であるSteve Jobsの言葉ですが,このdotsはその人の様々な経験を指しています。Jobsの言葉は次のように続きます。

 You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward. So, you have to trust that the dots will somehow connect in your future.

 現在やっていることが将来にどう繋がっていくか,今は分からないが,どんなことを経験してきたかが将来どんなことをやれるかを決める,ということでしょう。皆さんには,是非,大学院時代にこのdotsを増やして頂きたいのです。そのためには,失敗を恐れずにいろいろな事に挑戦し,試行錯誤を繰り返すような大学院生活を送って欲しいと思います。私は,大学院とはこれからの人生を決めるようなdotsを手に入れる場所であるとさえ思っています。学位は,その結果として付いてくればよいのです。

 二つめは「良い問を立てる=asking the right question」ことです。

 研究に取り組む際には,まずは何が課題であり,それを解決するには何をすべきかを明らかにする必要がありますが,さらに大事なことは,その課題を解決することが,より大きな概念を提示することや,従来の考え方を変えることに繋がるかを見定めることです。ある著名な医学者が「良い問を見出すことは,問に答えることよりも難しい」と言っているのを聞いたことがあります。良い問を立てることは,よい成果に繋がります。あとは,その問を解き明かすために十分な時間とエネルギーを注ぎ込めばよいのです。

 これで,皆さんの頭の片隅に留めておいて頂きたい2つのフレーズをお話したことになりますが,最後にもう一言。皆さんは,それぞれが専門とする分野で研鑽を積み,博士の学位を目指してSOKENDAIに進学されました。これから皆さんが歩まれる道は,きっと山あり谷ありの,決して平坦な道ではないでしょう。しかし,将来に大学院時代を振り返ったとき,今の自分のルーツはあの時代にあったと思えるほどの色濃い大学院生活を送って欲しいと願っています。大学も,教職員一同も,そのために出来る限り皆さんを支援していく所存です。

 改めて,本日はご入学おめでとうございます。

2024年4月9日
総合研究大学院大学 学長
永田 敬

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