2024.01.01
2024年 学長・年頭のご挨拶
皆さま,明けましておめでとうございます。
新しい年を迎えるにあたり,ひとことご挨拶申し上げます。
昨年は,5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行するなど,3年余り続いたコロナ禍がようやく収束し,世の中はほぼ日常を取り戻したように見えます。感染拡大の最中には“ポストコロナ”という言葉を頻繁に耳にしましたが,今その時になって,コロナ禍以前と何がどのように変わったかを考えてみると,オンライン授業やリモート会議が日常茶飯事となった状況があるにせよ,人の意識や行動そのものは,それ程簡単に変容するものではないという印象を拭えません。一方で,スマートフォンやタブレットなどのIT機器の普及が我々の生活様式に及ぼした影響を考えると,コロナ禍を社会心理学的にどう解釈するかには大いに興味が湧きます。
さて,昨年10月,新型コロナウイルスのmRNAワクチンに繋がる技術を開発した二人の科学者にノーベル生理学・医学賞が贈られたことは記憶に新しいところです。受賞者のひとりであるカタリン・カリコ氏の壮絶ともいえる研究人生は多くの記事でも取り上げられました。このことは,強い目的意識と情熱をもって他人がやらない事,できないと思う事に挑戦し続ける研究者マインドの大切さ,そして,どのような課題に対しても,世界の何処かで必ずその解決に繋がるような研究が行われていること,つまり研究の多様性が確保されていることの重要性を改めて痛感させるものでした。高等教育の現場においても,学術行政においても,我々がコロナ禍で再認識した貴重な教訓のひとつとして,そのことを心に刻みつけておくべきでしょう。
本学では,2023年4月に全学の教育組織・教育課程を改革し,それまでの6研究科20専攻を「1院20コース」へと再編しました。この再編は,組織や分野の枠組を越えて自由な発想で“良い問い”を立て,それに果敢に挑戦するresilientな博士人材を育てたいという考えに基づくものです。勿論,組織や課程を変えれば,それで直ぐに人材が育つという訳ではありません。何よりも大切なのは,我々が目指す人材育成に向けて,教員・学生自身の意識が変わることです。組織改革や教育改革は,意識改革のためのトリガーであり,個々の意識を醸成し行動に移し易くするための環境の整備であると考えています。
今,世界の各地で紛争が勃発し,社会を分断するような憂慮すべき事態が生じています。人々の生活を脅かす異常気象による災害も後を絶ちません。誰しもが,人類社会全体が大きな課題に直面していることを肌で感じています。そして,世界が少しでも良い方向に向かって進んでいくために,一人ひとりが変革の意思をもって行動することがこれまで以上に求められています。
そのような厳しい状況のなか,SOKENDAIは何処に向かい何をすべきかを常に考え,学内外の方々とも真摯に議論しながら,全力で大学運営に努める所存でおります。皆さまにも,どうぞ温かいご支援をいただけますよう,本年もよろしくお願い申し上げます。
2024年1月1日
総合研究大学院大学長