2021.12.13
第63次南極地域観測隊(越冬隊)の隊員からメッセージが届きました①
総研大ウェブサイトをご覧の皆さま、こんにちは。事務局職員の馬場です。
私は、現在、第63次南極地域観測隊の越冬隊庶務・情報発信担当の隊員として、日本から南極・昭和基地へ向かう南極観測船「しらせ」の船内にいます。
観測隊は様々な職種の隊員で構成されており、大別すると、研究や観測を行う観測系の隊員と、昭和基地の維持・管理を担当する車両・機械・調理・医療などの設営系の隊員がいますが、その他にも新聞記者、小学校、中学・高校の教員、大学院生などが同行者として参加しています。63次隊では、極域科学専攻の井上崚さんがドームふじ基地への旅行隊の一員として参加しています。
令和5年3月に帰国するまでの間、63次隊の様子を月1回程度のペースでご紹介していきたいと思います。
横須賀基地から「しらせ」に乗船
近年では、 11 月中旬に日本を出港する「しらせ」がオーストラリアに寄港するタイミングに合わせて、観測隊員は 11 月下旬に空路でオーストラリア入りし、そこで「しらせ」に乗船していました。しかし、昨年( 2020 年)に出発した 62 次隊は、新型コロナウイルス感染対策のため、横須賀から「しらせ」に乗船し、我が国の南極観測史上初めて他国を経由せず、(したがって、途中で燃料や物資を一切補給することなく)日本と南極を往復するという異例の行動計画を取ることになりました。
我々 63 次隊では、往路・復路とも途中オーストラリアに寄港して燃料補給を行う点が異なりますが、 62 次隊と同様に出発前に2週間の隔離期間を設け、2回の PCR 検査で全員が陰性であることを確認したうえで、この 11 月 10 日に「しらせ」に乗船し、海上自衛隊横須賀基地を出港しました。
ちなみに、「しらせ」は文部科学省予算で建造され、海上自衛隊によって運航されており、自衛隊では砕氷艦と呼んでいます。 3 月末〜4月上旬頃に南極から戻るとドックでの整備や国内での訓練航海を行うため、母港の横須賀に停泊している日は限られていますが、停泊していれば葉山本部の最寄り駅の一つである汐入駅近くの公園などからその姿を眺めることができるかもしれません。軍港内を巡るクルーズ船も運航されているので、葉山本部へお越しの際は足を延ばしてみてはいかがでしょうか。
新型コロナ感染症の状況下で、候補者として参加した 3 月の冬期総合訓練を除けば、隊員が一堂に会する機会はこれまでありませんでした。 10 月 28 日から「しらせ」乗船までの2週間の隔離期間中、「しらせ」に乗船する観測隊員は同じ宿泊施設に滞在しているものの、部屋から外に出ることはできず、ミーティングや講習はオンラインで行われました。
出港後の「しらせ」船内では、 11 月末まではマスク着用を継続するなどの感染対策を取りながら、講習や作業、行事などが対面で行われ、隊としての一体感が高まってきました。
金曜日はカレー曜日
船内での生活は土・日・祝日は関係なく日課が組まれ、完全にオフとなる日はありません。そんな長い航海での中での楽しみといえば、やはり食事です。海上自衛隊では、曜日感覚を忘れないように金曜日にカレーを食べるというのは有名な話ですが、夏隊が来年3月に帰国するまであと 17 カレー・・・といったようにカウントダウンの指標にもなっています。なお、現在越冬中の 62 次隊も昭和基地では金曜日にカレーを食べているそうです。
63 次隊では、横須賀から「しらせ」に乗船したことによって、空路オーストラリアした場合には経験できないことをいくつか経験しました。例えば、フィリピンのレイテ島東方で行われた洋上慰霊祭には観測隊員も参加させて頂いたほか、赤道通過時には赤道祭という航海の無事を祈念する行事が行われました。また、インドネシアのロンボク海峡(バリ島とロンボク島の間の海峡)を通過する際には、イルカの群れを見ることができました。
南下を続け遭遇したのは・・・
赤道付近では 30 ℃以上になった気温は、オーストラリア出港後、南下するにつれて日を追うごとに下がり、南緯 55 度を通過(南下)した 12 月に入ると 0 度近くになりました。また、 11 月 29 日と 30 日の夜には、往路の航海中としては珍しく、2夜連続でオーロラを見ることができました。
次回は、昭和基地に到着して少し落ち着いてからレポートする予定です。お楽しみに!
掲載協力:国立極地研究所