2020.05.18
在学生の皆様へ、新型コロナウィルス感染症に対する学長メッセージ2
新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言が出されてからおよそ 1 ヶ月が経過しました。当初予定されていた5月6日にはそれが解除されず、 5 月 14 日には 39 県のみ解除されました。その他の場所では、この事態はまだしばらく続くことと思われます。総研大の各専攻は、日本中のさまざまな場所に散らばっています。院生のみなさんにおかれましては、各県によって感染状況の深刻さが異なるのでしょうが、どなたも普段通りの研究の遂行ができず、大変に不安で落ち着かない毎日であることと推察いたします。
緊急事態宣言が出された当初のメッセージでも申しましたが、みなさんの不安とストレスはよく理解できます。そして、この状況がしばらく続いている現状においては、みなさんの生活がとても心配です。世界全体で経済活動が縮小し、人が集まることも、同じ場所で一緒に仕事することもできなくなった今、アルバイトなど、院生生活の糧の一部となっていたものも縮小し、ご家族からの仕送りも心もとなくなっているのではないでしょうか?
日本の各大学では、この事態に対処するために、さまざまな手段での学生生活支援を考えています。本学では、前期学費納付の期限を6月末から8月末にと延長しました。そして、学費免除の枠組みを、これまで以上に拡張するように取り計らっています。それがどのようになるかは、追ってお知らせがいくと思います。
授業や論文指導のために、ウェブでのミーティングができるようにするための手配も行いました。研究室に来られない、実験ができない、みんなで集まって話ができない、論文の相談ができない、という事態は異常です。それを少しでも解消するために、ウェブ上での授業、指導、ミーティングが活用できれば幸いです。
それにしても、博士論文の執筆の最終段階に入っている人、研究の最後のつめの実験をかかえている人など、先行きの不安は大変に大きいことと思います。そんなこんなで精神的にまいってしまわないよう、ウィルス対策だけでなく、メンタルヘルスの面でも気をつけてください。こんな閉塞状況で、自分一人で悩んでいると落ち込んでしまいます。専攻の先生方に相談するとともに、大学を初めとするさまざまな相談窓口などを利用してください。
私は、 2011 年3月 11 日に発生した東北大震災と、それに続く福島の原発事故をよく覚えています。あの時の大惨事と混乱は、現代文明の基礎を考え直すよい機会でした。しかし、それ以後は、これまで通りに復旧することだけが目標とされ、現代文明の基礎を考え直すことはされなかったように思います。
今回は、世界中の人々が現代文明を考え直す機会にさらされたのですが、これからどうなるのでしょう? 若い世代のみなさんは、新たな状況を前に、新たな目標を持つことができます。これまでの古い世代が当然と考えていた価値観も、当然ではなくなるでしょう。今は苦しい現状ですが、それを乗り越えた先に、みなさんが新しい世界を築いていってくださることを期待しています。
総合研究大学院大学 学長
長谷川 眞理子